サンバ二態

楽しさと悲しさ、カッコよさと滑稽さ、相反する2つが同時にあるのがサンバであると、
Desde que Samba e Samba(サンバがサンバである所以)
という歌はうたっているように思う。
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/desde.mp3
Brasil Pandeiro(ブラジル・パンデイロ)のような、ひたすら愉快そうな曲でも同じだろうか?
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/pandeiro.mp3
同じであってほしいと私は思う。

課題となっていた2つの曲を録音してみたが、それこそ、いいんだか悪いんだか……。
近所の工事現場とか、小鳥の鳴き声、同居人がパソコンを叩いている音とかも入ってます。

ゴージャスなあの娘のサンバ

このところ、ひたすらこの曲を練習している。
かなり近所迷惑なことだろう。ごめんなさい、ご近所のみなさん。
そして、同居している人はさらに迷惑である(涙)。

というわけで、一区切りつけて録音した『E Luxo So ゴージャスなあの娘のサンバ』です。
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/eluxo.mp3
この曲は、私がギターを弾きはじめたころからやりたくて、何度もチャレンジしたのだけど、
いつも最後のところのプララカイカイカイのところで訳がわからなくっていた。
楽譜をみても、全然理解できなかった。
まあ、今回のが「正解」かどうかはまったく不明ではあるが、とりあえず私はこんな感じでいこうと思う。

「E Luxo So」
ほら、あの子が踊るサンバ いいでしょ?
こんど、一緒に踊らないか いいでしょ?
ああ、輝いてる 笑顔が
もう とにかく夢中 ゴージャス あの子のサンバ

ほら、あの子が踊るサンバ いいでしょ?
こんど、一緒に踊らないか いいでしょ?
この 心に忘れてた 感じた
あなたのすべて 大好きなブラジルの
今サンバが はじまったから おどろうかな?
今サンバが はじまったから おどろうかな?
わき上がるリズムが あなたにも聞こえるかなあ

モーホに響くアヴェ・マリア

サン・パウロは低湿地に貧しい人が住み、リオは水のない丘(モーホ)に貧しい人が住んだということらしい。でも、ブラジルは成長を続けているし、オリンピックに向けてリオも変わるだろう。
仮に「天国からはちょっと遠ざかる」としても、それは基本的によい方向であるはずだ。

そんなわけで、モーホのアヴェ・マリアを訳してみた。

貧しい人たちの街 僕らのあのモーホ 住めば都
華やかな幸せはないけど 丘にのぼれば 天国も近い(天国も見える)
朝焼けも 夕暮れも 美しい
輝く空 鳥たちも歌う
丘には祈りの声が響く アヴェ・マリア
丘には祈りの声が響く アヴェ・マリア

ローカル線はゆく(ヴィラ・ロボス)

ヴィラ・ロボスの「ブラジル風バッハ」に挑戦してみた。
とはいっても、もちろん、ちっともクラシックじゃない。
ボサノヴァでもないし、一体これは何なのか。
ちょっとフォークソングぽいか?

♪ローカル線はゆく(付:大糸線はゆく)♪

走れよ電車 ローカル線よ
夕暮れ近づく 田舎の街を
どこまで行こうか? 明日がくれば
夜空の向こう 山越えて 谷越えて
どこまでも乗せて行け 人生と歌を乗せ 行け

走れよ電車 大糸線よ 梓川渡り 安曇野を行く
夕暮れに浮かぶ 有明の山
大町、白馬、南小谷、糸魚川
どこまでも乗せて行け 人生と歌を乗せ 行け

私は子どものころ、結構鉄道が好きだった。宮脇俊三なんていう人の文章を読んで、「国鉄全部乗ってやろう」なんて野望も抱いたものだ。
そんなわけで悪ノリして、思い出深い九州の九大線とか地元の西武新宿線とかも登場させようかと思ったが、結局ちゃんと出来たのは大糸線だけだった。
この曲はたぶん著作権も切れているんじゃないかと思うので、鉄道好きのみなさんがこの調子でどんどん作ってくれると嬉しいなあ(笑)。

(ヴィラ・ロボスの名曲だが、私はエグベルト・ジスモンチのヴァージョンで親しんでいた。
歌詞の存在を知ったのはごく最近だ)

Feitico da Vila (ヴィラのこだわり)

私は結構曲を間違えて(というかいい加減に)覚えているので、そのまま日本語をつけたりすると、原曲から遠くかけ離れたことになったりする。
それはそれで面白いからいいじゃん、とこれまたテキトーなことを思ったりもするが、あまりに違いすぎると自分でも気持ち悪くなることがある(笑)。
なかでも「Feitico da Vila (ヴィラのこだわり)」と「ブラジル・パンデイロ」は気持ち悪いので、修正したいと思っている。
しかし、メロディに合わせて日本語まで微調整しなければならないので、これはなかなか苦しい作業だ(完全に自業自得である)。
ここでは、ようやくまあなんとか形になった「Feitico da Vila (ヴィラのこだわり)」を録音してみました。
なんか、出だしがものすごく不安定ですが(笑)、なかなか味わいのある歌詞なので、ぜひ聞いてください。

ところでこの訳は、どちらかというと「部分訳」であり、難しいところ、分からないところは省略している。
いろんな意味で語るべき内容が多い歌詞らしく、ネットにはカエターノ・ヴェローゾが内容を講義(?)しながら歌っている下のような動画もある(ブラジルの人種問題についてらしい)。
ポルトガル語に堪能な方、ぜひ聞き取って内容を私に教えてください!
もしかすると、また訳を変えなきゃいけない事態になりかねないけど……。

Eu Sambo Mesmo(僕のサンバ)

100曲目候補だったEu Sambo Mesmo、意外に簡単に訳せたのでやってみた。
とはいえお聞きの通り、難しいのは訳すことよりも演奏のほうである……。
とりあえず現状は、こんな感じということで。

この曲が1曲目として収録されている「ジョアン」というアルバムが大好きだ。
もちろん、他のアルバムもいいが、『レジェンダリー』以外でひとつ選べといわれたら、これを選ぶかもしれない。オーケストレーションのバランスとかの話もあるが、何よりこの曲でいきなりガツンとやられたてしまうという単純な側面も大きいのである。

100曲目?

恥ずかしい話だが、ときどき「これまで何曲訳したんだろう?」と思って数えてみたりする。
途中でボツになった曲もあるし、どう考えてもボサノヴァとは呼べない曲もあり、そもそも数ははっきりしないのだが、このあいだ数えたら99曲あった。
それで、「次は100曲目にしよう」と思った次第。
意外にそういう節目が好きなのかもしれない。

さて、それなら100曲目はやはりジョアン・ジルベルトのレパートリーにしようと思い、次の3曲を候補とした。
Ave Maria no Morro (きっと詩が美しいにちがいない)
Morena Boca de Ouro (いかにもジョアンらしい曲)
Eu Sambo Mesmo (大好きな曲)
結局、ひとつめと3つめはなかなかうまくいかないので、2つめに集中した。
これは素敵な女性の踊る姿を歌いながら、いつのまにかサンバ讃歌になっているようだ。
かつ、追いかけても決して自分のものにできない感じであり、この凄いようでどうでもいい節目には、ちょうどいい気がしたのだ。
しかし、最後のところでかなり苦戦してしまった。

黄金の口のモレナ Morena Boca de Ouro

モレナとびきりの可愛い子 笑顔も輝いて
見たことがないような
ジンガ踊りはまさに サンバ 君が好きさ
誰もが振り向くその姿 男たちの悩み
聞いたことがないような ジンガ魔法のリズム
サンバ どこへ行くの
胸の鼓動 パンデイロ
まるで奇跡のサンバ奏でる
サンバ君が誘い サンバ君は逃げる
アモール 愛はまた生まれる
そしてサンバは続く 心奪い 傷つけて
モレナここに君を愛し 見つめる 哀れな僕がいる

いまだに、「そしてサンバは続く」は「そしてサンバよ続け」のほうがいいかな、
などと思ったりするし、あちこちの「てにをは」もピシっとこない。
もしかしたら、かなり失敗作なのかも。

付け加えると、「ジンガ」は「千鳥足」「揺れ」「フェイント」。
サッカーやダンス、音楽の「奥義」かもしれないもの。
女性も音楽も永遠に謎ということにして誤魔化し、私の人生も続くのである。
いや、やっぱり「続け」にしようかな……。

フェミニーナ

長年の課題だったジョイス女史の「フェミニーナ」の訳、ようやく一応録音できた
今回は、ここにちゃんと歌詞を書いておこう。

ママ、大人になったら あのフェミニーナ 女らしさ私に
分かるときがくるかな?
あなたは笑った このフェミニーナ
長い可愛い 笑顔だけじゃないのと
紡いだ糸が切れたら 大きな空へと飛び立つ

ママ、あなたが教えた このフェミニーナ 女らしさ私が
私であることだと
終わりと始まり 同じものなら 長い道のどこから
どこへ行くの私は?
世界のご馳走並べ テーブル燃やしてしまう

この歌は彼女なりの「フェミニスト宣言」だと思うので、訳していて緊張した。
もう十何年も前のことだが雑誌のライターとして彼女にインタビューをして、「フェミニストとして尊敬しているのは誰ですか?」と質問したことがある。
答えは、「お母さん」。
そのとき私は、この歌の意味をちゃんと考えずに聞いていたのである。
そういえば彼女の自伝にも、この素敵なお母さんは出てくる。

大きな愛

ヴィニシウスの詩は大袈裟なのが多いが、これもそのひとつだと思う。
抽象的で、それこそ「偉大」な感じもするが、私のようなだらけた人間には、やや恥ずかしいと感じられることもある。

大きな愛(O Grande Amor)

この曲はジャズ・ミュージシャンに人気があるようだ。
ブラジル大好き、というタイプのボサノヴァ・ファンにとっては、スタン・ゲッツのあの演奏が思い浮かんでしまうのかもしれない。
いろんな意味で私には縁遠い曲だったのだが、ずいぶん前にぜひ訳してくれと言ってくれた方がいて、課題となっていた。やってみると、結構いい曲だなとも思う。というか、相変わらず私の演奏はあちこちでいい加減で、ほんとに申し訳ないです。