月曜日はカーニバル

ひさびさに新訳ができたので録音。
こういう趣旨のはっきりした曲はあっというまに訳せるな、と思ったのだが、
一度できたあと、あちこちいじっているうちに一ヶ月くらいすぎてしまった。
詩の理屈というのは強固なもので、一度できあがると簡単には壊せないものなのだが、普通に理屈っぽく訳してしまったということかもしれない。
内容的には、暗いテーマも徹底して追求すると、結構ポジティブな話になるという話でもあるのか?
しかし、どんだけ祭りが楽しかったんだ、という気もちょっとする。
日本は灰の水曜日が続いているような感じもするので、もしかしたら時局に合っているのかも(涙)。

灰の水曜日のマルシャ

http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/quartafeira.mp3

月曜日はカルナヴァル 火曜日はカルナヴァル
でも今朝は祭りのあと 水曜日 それは灰の水曜日
誰もいない街 歌声消えた街
昨日までは笑顔が 溢れてた 音楽が溢れてた
歌を私たちに 今こそたくさんの 愛と喜び 平和の歌
悲しみもいつか きっと終わるだろう
微笑みは 希望の日はのぼるだろう 幸せは戻るだろう
青空見上げれば 輝ける世界に まだ見ぬ愛が溢れている
もう一度カルナヴァル 懐かしいカルナヴァル
美しいあのマルシャ 歌ってた
あのときの あの歌を あのときの あの歌を

Beira Mar(海辺)のおもいで

夏の前半はほとんど家にひきこもっていて、ひたすら暑さと戦っていた。一度だけ、葉山の海に行ったら、突然あまりの眩しさの下に引っ張りだされたようで、びっくりした。
太陽の眩しさだけでなく、あらゆるすべての眩しさ。
さて、ちょっと前にブログのコメントで読者の方からリクエストをいただいた曲を訳してみた。カエターノ・ヴェローゾの曲で、ジルベルト・ジルがよく歌っているBeira Mar(海辺)。

http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/beiramar.mp3

Beira Mar(海辺)

私の生まれたあの海へ戻ろう
ほら、聞こえるだろう?
繰り返す波が胸の鼓動さ

波間で生まれた魚と同じ網にまかれて
ここへ来たんだ ここへ来たんだ

たぶんあるいは浜の椰子の木
海のそばにある木陰に夢見る
大きな葉を広げる 椰子の実ひとつ

はじめて恋した愛の渚よ
ただそばにいて海辺を歩いた 海辺を歩いた

海は海でもただそれだけで 終わらない海
世界にひとつ 遠い島影
あれはイタパリカ

ああバイーアの海は特別なのさ
ああバイーアどこまでも 透明な海 透明な空

心のなかは海と同じ色 あらゆる空の色
すべてを映した海は歌っている
ああサンバが聞こえる
青い海、青い海バイーア
生まれたときと同じ
心のなかは 心の色は青

IMGP3913
IMGP3913 posted by (C)ottwaki

ところで以前、知り合いが「トロピカリアを題材にしたドラマがアメリカかどこかで作られているらしい」と教えてくれた。まったくの未確認情報でガセネタの可能性もあるが、カエターノやジル、ガル・コスタやマリア・ベターニアなどが登場し、海辺を舞台にした恋物語らしく、なんでもカエターノとジルのホモ・シーンもあるのだとか……。
たぶんこの曲は、葉山の海に連れ出された引きこもりが歌うよりも、そういうドラマの主題歌とかにぴったりだと思う。

アストロ小唄

ひさびさに新訳です。
宇宙飛行士(アストロナウタ)というタイトルだが、「質問のサンバ」という可愛らしいサブタイトル(?)もついている。
曲調はちょっと暗いが、もしかしたら、こういうのが「いかにもボサノヴァらしい」感じなのかもしれない。
そして、詩としては嫌いじゃないが、歌としてはもう少しシンプルでもいいんじゃないかと思った。

http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/astronauta.mp3

アストロ小唄(宇宙飛行士) Astronauta

あなたは 私にとってもう ただのコンセプト(概念にすぎず)
遠い星空 宇宙飛行士 小鳥のはばたき
糸の切れた凧 風に飛ばされる
風船みたい 宇宙に浮かんだ 小惑星にいるのかな?
夜空に光った あなたはどこかへ 消えちゃった

クスクスの謎

「ブラジル・パンデイロ」という名曲があり、仲良く3つの料理名が並んでいる。クスクス、アカラジェ、アバラー。歌詞の内容からいって、どれもバイーア名物らしい。
アカラジェはブラジルで食べたことがあるので、なんとなく分かる。アバラーはその蒸し物バージョンだろうか。
しかし、ここにクスクスが出てくるのは、ちょっと不思議な感じがする。
ひとつは、へえブラジルにもクスクスがあったのかという素朴な驚きだが、もうひとつは、他の2つの料理(スナック? 軽食?)とだいぶ毛色が違うイメージのため。

ブラジル・パンデイロ♪
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/pandeiro.mp3

まるでバイーア娘がつくったソースをかけた
このクスクスに誰もがとろける
だからバイーア男は踊るよよーややー

例によって私の訳はテキトーであった。クスクスは大好物だし、それ以外は日本語にしても馴染みがないので割愛し、クスクスだけ残したわけだ。
しかし、本当にソースというか、スープをかけたようなクスクスなのか、やや怪しかったわけである。

そこへ、素晴らしい本が出版された。にむらじゅんこ『クスクスの謎』(平凡社新書)
期待に違わず、クスクス好き必読の素晴らしい内容である。
そもそも、クスクスって何なのか、どうやって作るのかというところから、歴史やヴァリエーション、その思想(!)まで、大変興味深い。
この本によると、クスクスをブラジルへ運んだのはレコンキスタ後のイベリア半島を追われたユダヤ人(セファルディム)であるという。
北アフリカのものがブラジルにあるのは決して不思議ではないとぼんやり考えていたが、どうも微妙に事情が違うようだ。
クスクスはたぶん強烈に「異教徒っぽい」食べ物だったのだろう。異端審問の厳しかったスペインではクスクスがほぼ消えたのに対し、比較的寛容だったブラジルには残ったという感じ。

さて、この本にはブラジルのクスクスとして3種類が採り上げられている。
・クスクス・パウリスタ(サンパウロ)
・ブラジル北部のクスクス
・ココナツミルクの海鮮クスクス
このうち、2つめ(「北東部」とすべきだろう)のが「マフィンのようなケーキ風」とあり、たぶん歌詞にあったのはこれではないかと推測される。
でも、3つ目のようなわりとイメージ通りのクスクスも存在するようだから、訳を変えることもないかもしれない(無責任)。

書いているうちに、クスクスがまた食べたくなってきた。
もちろん私の思い浮かべているクスクスはバイーア女とは関係のない、モロッコやチュニジアなどマグレブ風のものである。もちろん、豆との相性もひじょうによい。

百合の花

個人的には人生何度かめの園芸ブームなのだが、私は植物を育てるのが恐ろしく苦手なので、あまりいい予感はしない。なので、植物の購入はなるべく控えめにしている。

「百合の花」という曲は、ものすごく前から何度も手をつけては挫折、やってみては諦めを繰り返してきたもの。
こういう曲がさくっとつくれてさくっと歌える(ように見える)ジャヴァンみたいな人がうらやましい。

http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/lis.mp3

百合の花
神さま(願わくば) 許し給え 恋が終わる 間違えたのなら 教えてください 
どこで何を なぜこんなに 君を愛しすぎた 求めすぎた

おそらく あの時から 心のなか 見たこともない美しい何かが
生まれていた 白い百合の花のような
大切なものが今はない 今は 乾いた土くればかりだ
いつもたくさんの 花が咲いてた
庭の日だまりは どこへ消えたの?

あまり演奏しない曲たち

やらないのには理由があって、どこか弾きにくかったり、歌詞が気に入ってなかったり、まあいろいろ。
とりあえずは訳したものの、レパートリーから消えてしまう曲も、なかにはある。
それはもったいないので、しばらくすると再びいじってみて、救えるものはないかと探すわけだ。

今回は「リジア」の歌詞を思い切って変えてみた。
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/ligia.mp3

夢はみない 映画みない サンバ嫌い
イパネマの海も 雨も太陽も 好きではない
君に電話してすぐ 君の名前さえ 知らぬことに気づく そして受話器を置く

愛はいつも心痛め 幻と消える
コパカバーナの冷えたビールの泡のよう
君を愛してしまった その瞳がもう 太陽の光より僕を脅かす

例によってかなり内容を変えている(分量的にも減らしている)のでオリジナルからはちょっと遠いかもしれない。個人的には、電話をかけておいて自分で切っちゃう感じが気に入ってる。
これから、もう少し頻繁に演奏することになるかもしれない。

Foi a noiteも、ひさびさにやってみた。
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/foianoite.mp3
これも歌詞が違うんじゃないの? という気は大いにするのだが、結局うまく直せず。

ひとりは悲しい

まだ訳してなかったの? という感じの名曲、有名曲、そして情けない歌。

トリスチ 悲しい

http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/triste.mp3

ひとりは悲しい あなたは美しい(冷たい)
夢見てばかり 目を覚ましたい
いつの日か あなたと並んで歩きたい

でもあなたは今 遙かなる高み
心はただ 憧れ震える
ひとりは悲しい

最近買ったバスメロディオンを入れようと四苦八苦したが、音域が限られ、かつ私の演奏が下手であることにより、結局諦めたので、音源としてはやや退屈なものになってしまった。
楽譜に書くくらいの気合いを入れないと、こういう楽器はうまく使えないのかも。

放送禁止歌?

今の日本だと、ちょっとこれは放送できないかもしれないが、私はとても好きだ。

ノエル・ホーザ Gago Apaixonado

タイトルを訳すと「恋するどもり」という感じだが、「情熱的なる吃音」あるいは「恋がふるえて」とかでもいいのかもしれない。ジョアン・ボスコのカバーがわりと有名かな?

http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/gago.mp3

な、な、なぜかな き、君といると
緊張で こ、声ふるえる
かな、なしいこと 言葉に 傷つき
き、君の心 ど、どこにあるの?
と、とて、てもいいひ、人だと
だ、だ、騙されていたんだ
かかか 可愛い笑顔で君
どどどどどどど どうして う、嘘ばかり?

学校を卒業して会社に入ったころ、私はカラオケの洗礼を受けた。ひとまわりもふたまわりも上のおじさんたちに連れられて、よくカラオケボックスで歌いまくったのである。
ひじょうに個性的な人たちが多く、私にとっては「セロ弾きのゴーシュ」的な修行時代と言えるのかもしれない。
そのなかに、吃音で福山雅治や尾崎豊などを歌いまくるおっさんがいて、衝撃的だった。本当に素晴らしい、これこそ歌、というカラオケだった。
ちなみに、尊敬するその先輩とは、今も年に一回くらいは飲み会でご一緒させていただいているが、このあいだ年齢を聞いたらもう70歳を過ぎているらしい。いろいろ見習いたいところである。

ストーカーのやさしさ?

「カリニョーゾ」を訳すと「やさしく、愛情を込めて、愛撫するように」くらいの感じだろうか。ブラジルを代表する有名な曲だが、こんなに怖い歌詞とは正直思ってなかった。
とはいうものの、これには多分、時代や文化の違いなんかの事情もあるのだろう。
一方的に思いを募らせ、妄想を膨らませ、追いかけ、逃げるなと迫る。
今では「ストーカー的」ともいえる歌詞も、かつてはごくごく普通だったのかもしれない。
本来はその辺を勘案して穏やかに訳すべきなのだろうが、今回は面白いので敢えてそのままにした。

カリニョーゾ
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/carinhoso.mp3

なぜかな? 心が 幸せを 歌うよ
あなたには聞こえない? 感じないの? どうして
あなたは 逃げるの?

なじかは 知らねど 心が 微笑む
あなたには見えないの? 感じないの? どうして
あなたは 逃げるの?

愛する心 やさしい心 本当の心
あなたに伝えられたら決して逃げたりはしないはず
おいで 胸のなかへ くちづけ あふれるほど
そしてふたりの心は はじめておだやかな 愛に包まれる

ボサノヴァではなく、ショーロの曲として知られている。
楽器に苦手意識のある私にとって、器楽音楽であるショーロというジャンルは遠い憧れの存在だが、この曲は歌詞もついてて、ボサノヴァ系の歌手が歌うことも多い。
こんど、ライブをご一緒させていただく「けんはもよん♪」は、鍵盤ハーモニカ4人+パンデイロでショーロを演奏するというすごいグループらしく、私はびびっている。
そんなこともあり、この曲を訳してみた、という話でもある。

★live @ 奇聞屋
2011/9/1(木) 19:30~
出演:けんはもよん♪(中浩美,岡野勇仁,赤羽美希,林加奈,飯島ゆかり), OTT
Charge 700円+オーダー+チップ
場所:
奇聞屋(杉並区西荻南3-8-8-B1)予約03-3332-7724

ありうる? ありえない?

想定外のことは起きるものだというのは、まあ当たり前の話で、私のようないい加減な人間が言ってもただの言い訳にしか聞こえないけど、カルトーラのような滋味溢れるちょっとこわもての人が歌ったりすると、異様な説得力をもってしまうというお話。

アコンテシ(ありうる)
http://ott.sakura.ne.jp/ottnet/songs/cartola.mp3

いつもこの世は不思議さ
どんなことだって、ありうる
私の愛はもう終わった
君はきっと悲しむのだろう 泣くのだろう
心から愛していたけど 今の私にはできないよ
ただ嘘をついて暮らすなんて
愛しているふりなんてできないよ
ありえないのさ

ボサノヴァというより、サンバです。
しかし、「どんなことでもありうる」とか言っておいて、最後に「それだけはありえない」で終わる歌ってすごいよなあと思う。
*暑いので演奏や録音がいい加減なのはどうかお許しを。