本当は、こういう読書が一番楽しいのかもしれない。
……
現物をとれ、あの世の約束に手を出すな
遠くきく太鼓はすべて音がよいのだ
……
ないかと思えばすべてのものがあり、
あるかと見ればすべてのものがない。
訳者が言うようにえらくモダンな世界観だと思う。
オマル・ハイヤームというとどうしても酒のイメージだが、
この合理性というか、明晰な感じは、酒ぽくない。
むしろ、私のイメージではアラビアン・ナイトのほうが酒ぽい。
春山行夫『ビールの文化史1』
私はといえば、酒なんぞ飲みながら、こんな本をダラダラ読んでいる。
豆の文化史を夢想する。
山際素男『踊るマハーバーラタ』
そういや、まだ『マハーバーラタ』も読み通してないな。
その訳者がエッセンスをぎゅっとまとめた小さな本。
こういう試みがもっと多くあっていいのにと思う。
原書もしくは原典訳のよさもあるが、やはり訳注だらけの長い本を読むのは苦しい。
現代に生きる紹介者の視点で、面白さを抜き出したこういう本は、有り難い。
美女を前にした王が「うーむ、抱きたい……」などと独り言をつぶやき生唾をのむシーンなど、訳もなかなか愉快な感じになっている。
牡牛へのこだわりも面白い。
特に感心したのは、「性の化身」と題された章。
老婦人のなかに若々しく美しい性を発見するシーンは、ちょっと驚きだ。