サンパウロへのサウダージ

最初に見たブラジルはサンパウロで、私はそこで2週間近くうろうろした。
ご存知の通りコンクリートだらけの巨大都市であり、リオやサルヴァドールに比べれば、色気はない。
でも、長い時間を経て記憶のなかでは、美しいリオやサルヴァドールよりもサンパウロのほうが存在感を放っていたりするから不思議である。
遠い昔にレヴィ・ストロースが撮影したこれらの写真が魅力的なのも、やはり時間の経過があってこそだろうか?
今福龍太さんが撮った写真との「今昔」の対比も面白いし、同氏のちょっと気取った文章も悪くない。
それでも、ちょっとやりすぎの本という感じは否めない。

今福氏とほぼ同じ頃サンパウロへ行った私が探したのはレヴィ・ストロースが見たこの街じゃなくて、若き日のカエターノ・ヴェローゾが見た風景。
「サンパ」という歌のなかにある「サン・ジョアン通りとイピランガ通りの交差点」に立って想像してみたが、正直言ってよく分からなかった。

この名曲をジョアン・ジルベルトが素晴らしいカヴァーにしてしまった。
ジョアンの素晴らしい演奏はたくさんあるが、原曲をうまく料理したカヴァーという意味では、聴くたびに感心して凄いと唸ってしまう。
私は必死に日本語の歌詞をつけてみたが、2つのヴァージョンに挟まれて迷子になってしまったようだ。
レパートリーとしてなんとかもう一度復活させたいのだが、手直しすればするほどヘンテコになってしまう。
これを無理に訳そうとすること自体が「やりすぎ」なのかもしれない。


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