高層ビル


 住んでいるマンションの目の前に高層マンションが完成した。引っ越してきてからずっと工事の進捗具合を眺めながら暮らしてきたわけだから、びっくりした、というのとはちょっと違うのだが、なぜか惚けたように口を開けて見上げてしまう。
再開発にともなって、周囲は古い店が取り壊され、新しく道路が整備されたりと大忙しである。こうした巨大な工事を見ていつも感じるのは、「どう変わるん だろう」という一種の高揚感と、何やらよく分からない無力感のようなものである。この二つはセットになって、子供のころからずっと続いてきたように思う。
たぶん「進歩」と名のつくものは、ほとんどの人にとってそういうものだったのだろう。ときどき、少しは自分もそれに関わったり、あるいは少しは自分にも 関係がありそうだなどと思うが、基本的には自分の意志とは無関係のところでそれは進行していく。(2002.3.18)

追記:まるで進歩の象徴であるかのように取り上げたこの高層マンションであるが、この後、大学の友人がここに引っ越してきたことが判明した。同世代の所得格差が広がりつつあることを実感させる出来事であった。


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