試験蛍 Ⅱ

copyright by wakisaka fumihiko

-しかし試験終了間際 貢院にて-
超俊:ああ、引用文のここの箇所だけ
どうしても思い出せない
超俊:こんな簡単な文を
何で忘れてしまったんだ!
超俊が字句を必死で
思い出そうとしていると
どこについてきたか先日の蛍がはい出て
奇妙な動きを見せた
”ここは”
”三”
”ここは”
”十”
超俊は蛍の教えるままに
夢中で文字を書き込んだ
超俊:ただいま!父さん母さん
了俊:どうだった試験は
超俊:ばっちりだよ!
超俊:この蛍がいたおかげで
解試は受かっているかもしれない
いやこいつがいれば
省試に受かる事もあり得る
そして殿試に合格すれば俺は高級官僚だ
布にくるんだ蛍を前に試験の疲れで
超俊はうたた寝をしてしまった
その時超俊は夢を見た
宋の皇帝に飼われる夢である
太祖:ホ・ホ・ホ光れ光れ
その知の光で朕の天下を照らしておくれ
超俊はこの時初めて
蛍の寿命が数週間しかないことを
思い出した
超俊:うーんうーん…
了俊:どうした!うなされて
超俊:は……!
超俊:父さん俺科挙やめるよ
父さんの跡を継ぐ
了俊:何だと…?
夕方遅くまで草取りをする超俊の周りには
星のように光る蛍達が舞い飛んでいた