ほらあなのピーコ

copyright by wakisaka fumihiko



カナリアはか弱いので人間よりも先に毒ガスの影響が出ます





そのため鉱山などで毒ガス検知器の代わりに
飼われることがあるのです





ピーコもそんなカナリアの一羽でした





しかしピーコはそれだけでなく





毎日暗闇の中で岩と格闘する男たちに
心の安らぎを与える役割も果たしていたのです





ピーコはなき声の王様と呼ばれるカナリア種で
休み時間にはそれは美しい声で歌うのでした





男たちはその歌を聴いて
(ああ、オレは生きているかいがあるなあ)
(よし、今日も一日がんばろう)
と力がわいてくるのでした





そんなある日――




ピーコの様子がなにか変だぞ!





ピーコ!





毒ガスだーーーーっ





ケガ人はいないか!?
早く脱出しろ!





ピーコが息をしていない!





だれかピーコを救けてくれませんか!





……………………





オレは町で医者の助手をやってた
細い管と輪ゴム、それから風船はあるか





ストローだったらあるよ
オレのヘアバンド使ってください
ゴムならあるけんど





よしできた これをカナリアの口に入れる





空気を送りこんで呼吸の手助けをするんだ





ピーコ助かってくれ……





お前のきれいな歌声をまたきかせておくれ……





血を吐き出した!





お         わっ          





やったーーーー
生命ばんざい!





あれから一週間――





ピーコはどうなったかというと





ちゃんと元気でくらしているのです


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