古寺記

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昔ある古寺に化け物が住むという噂がありました











僧:私は長い間諸国を廻り
今まで百七匹の魑魅魍魎と戦ってこれを倒してきたが
この寺の妖怪と対決して旅の終わりとするとしよう

村人:お坊さま、お願いしますだ






僧が寺に泊まり丑の刻になると
急になまぐさい風が吹いてきて
あたりが騒々しくなりました






怪物:和尚、問答かけるぞ

僧:承知

怪物:三つ問ううちに答えられなかったら
お前を喰うぞよ

僧:承知

僧:私が問答に勝ったら
この寺を出ていってもらうぞ

怪物:おー











僧:…巨躯とは大きい体
鋸歯とはギザギザに並んだ牙
にそくとは二本足で歩く事
汝、元来、人を襲って喰う
鬼の一族であろう






怪物:はぁ〜ずぅ〜れぇ〜っ
















怪物:違うなあ〜
たかだか百年前の話をもちだすとは
尺度が小さい











僧:六千五百万年!?巨体、二本足、竜盤目…
汝、元来…






僧:ティラノサウルス…?











僧:大ヤモリ…






僧:はるか祖先の名をかたるとはな…
どれ、私は仏僧ゆえ殺生はできぬ
代わりにこの妖力を持った尻尾をちぎってやろう











夜が明けると僧は合図に寺の鐘を打ち






かけつけた村人達に化け物の尻尾を見せました






こうして僧の旅は終わり
約束通り”寺の僧侶”となりましたとさ



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