試験蛍 T

copyright by wakisaka fumihiko



宋の貧農の子超俊25歳が科挙を受けるのを
父・了俊は喜ばしく思わなかった





了俊:いいか、今度の解試に合格しなかったら
うちの仕事を継ぐんだからな
超俊:わかったからおやすみ、父さん





蝋燭代がもったいないので
超俊は田んぼでとった蛍を灯りに使っていた





その夜超俊は夢を見た
自分が飼っている蛍の夢である





蛍灯:蛍光、しっかりしろ!
蛍光:私はもう虫の息だ…





蛍光:超俊というやつも根はいい人間だし
私も勉強ができて満足している

それよりも私の屍体をとり出すとき
一匹ぐらいなら逃げ出す機会が出来るかもしれない





蛍光:蛍雪、お前が逃げるのがよい
蛍雪:えっ?私がですか?
蛍光:そうだお前は賢いから
生き延びられるに違いない




蛍光:では私はそろそろ死のう
−がく
一同:蛍光!死ぬな−





母・絹道:あらにわか雨だわ





はたして超俊が虫籠を覗くと一匹の蛍が死んでいた





屍体を取ろうと籠に手を入れると
生きている方の蛍の内一匹が腕をはい登って
服のそでに入ってしまった





超俊:くそ、取れないな





超俊は「まあ、また捕まえればいいさ」と
あきらめていつもの通り蛍の埋葬をした





そしていよいよ出発である
雨上がりの道には歩くと足跡が残り
空には虹がかかり超俊の前途は洋々たるかに見えた


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