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ベストショットあらすじ

 山桜優希

町の中にある塾から女の子3人が出てきた。一番早く飛び出したのは宮本玲佳(れいか)だった。その後を追って親友の倉橋明(あかり)と高野潤子が続いて出てきた。

 この3人は、幼稚園からの親友だった。玲佳は身長168センチで髪の毛は背まである美人なんだけど、ちょっと猪突猛進なところがあるトラブルメーカー。明は170センチの長身で髪の毛は肩まである美人なんだけど玲佳とは違うクールビューティ。ふたりともスタイルは抜群。潤子は153センチと小柄で髪の毛はおさげで3人の中ではマスコット的存在だけどしっかり者だった

 そして、玲佳が自転車で飛び出していった。その後を明と潤子が自転車で追いかけた。

 その時だった。自転車独特の物凄いブレーキ音がした。明と潤子は、急いで玲佳の所に向かった。そこで2人が見たのは、ガードレールに立て掛けられた玲佳の自転車。その反対側にはおかっぱを長くしたような感じの少女が座り込んでいて、その横に白いトートバックが転がるようにしてあった。

 潤子はすぐにその少女が怪我をしていないか優しく質問し、一方で明は玲佳をかんかんに怒っていた。でもその少女が怪我をしていないと分かった。玲佳はその少女に謝ろうとした時、事もあろうに一目惚れしてしまった。それでもきちんと謝った。その日はそれで終わるかと思ったら、潤子が生徒手帳を見つけ出した。そしてその少女は、実は玲佳と同じクラスで男の子だという事が分かった。

 翌朝、潤子は、玲佳に生徒手帳を託して自分のクラスに帰ってしまった。玲佳は出欠を取る中であの少女が男の子だとはじめて確認した。名前は森山夕貴。休み時間のとき初めて話して、玲佳は失礼にも学ラン姿の夕貴に女の子みたいと言ってしまい、すぐさま謝った。

 その日のお昼休みに4人は中庭に集まっておしゃべりをした。驚いたのは夕貴も3人と同じ塾に通っている事だった。夕貴と潤子が仲良くなったので、玲佳は嫉妬していた。放課後、明と潤子に玲佳が夕貴ちゃんと呼んだ事に二人は出来てるとひやかした。その日の夜の塾の帰り玲佳は夕貴と潤子を比べて夕貴の方が女の子らしいと言ったら夕貴は怒った。潤子はいつもの冗談なんだからと言ってなだめたけど夕貴は黙ったままだった。それで、玲佳は夕貴に謝った。夕貴は瞳を潤ませながらもう気にしてないからと言った。

 翌日から、玲佳のグループと夕貴のグループは徐々に枠が無くなりクラスの核となって良い方向へまとまっていった。けれど、それによって夕貴が目立ちすぎてしまって、嫌がらせを受け始めていたのも玲佳は知った。体育祭に向けて応援旗の作成中に夕貴を罵倒する男子がいた。夕貴は、そのまま教室から出て行ってしまった。その時、夕貴のいつもはおとなしい友達の小沼礼子が抗議した。でも相手は何にも感じていなかった。その時、玲佳は怒りを爆発させ、罵った数人の男女に夕貴への謝罪を求めた。それで決着がつき、礼子にお礼を言うと玲佳も教室を後にした。夕貴は学校の一番奥のトイレで顔を洗っていた。そこに玲佳は入ってしまった。でも夕貴からの冷たい視線と拒絶。でも、玲佳は泣きながら夕貴を好きといって抱きしめた。そこで二人は顔を洗いハンカチの交換をした。教室に戻ったふたりはごく普通にクラスメートの中に戻っていった。夕貴はその日遅くまで教室にいた。心配した玲佳は夕貴の過去を聞いた。夕貴は、その時、「わたしも大きくなったら女の子になれるんだ」と思ったと言った。だから、いずれ自分の体もそうなれるって信じていた。だけど、そんな魔法みたいな事起きるわけなかった。だけど、なれるってずっと信じていた。それは妹が生まれても変わらなかった。だけど妹たちが大きくなるにつれて、自分の体にギャップを感じ初めていた。ちょうど、小学校中学年ぐらいからそれで悩んでいた。周りの子達は 胸が大きくなっていくのが分かったり、生理のこともあまり聞かなかったけど、自分には無いからなんか悲しくなった。でも、いつか自分の胸も大きくなって、おちんちんが無くなって、そして生理が来るんだと微かな望みを持っていた。

 その、夕貴の思いはなんとなく両親も感じ取っていた。でも、夕貴のお母さんは、夕貴自身が女の子として、みんなの中にいるっていうことに気が付いた。

 それで、お父さんとお母さんは、夕貴の事を思って小学校に入ると、サッカークラブに入れてくれた。だけど、夕貴は、何でここにいるんだろうと言う気持ちが強くなって、やめる、やめないで、けんかしたりした。それは小学校中学年まで続いた。毎週日曜日の朝はいつもそうだった。そして、女の子のサッカークラブがあることを知った夕貴は、こっちになら入るとかいったけど、駄目だった。

 そこで、夕貴はとんでもない行動に出た。小学校に行く途中の公園のトイレで、ブラウスやスカートに着替えて、脱いだ服は体育袋に入れて学校に登校していた。夕貴は、今でもそうだが髪が長いので、着替えてしまうと、ランドセルは黒でも、女の子にしか見えない。そのまま登校して、友達やクラスメート、担任の先生をびっくりさせていた。

 そういうことで両親に反発し、自分の気持ちを伝えようと女の子の洋服を着続けていた。その時着ていた、スカートやブラウスや上着とかの洋服は、自分で近くのフリーマケットに出かけ、売り子のお姉さんにうんと安くしてもらって買ったものだった。夕貴の可愛さと、少ないお小遣いでの買い物での必死な値引きに、売り子のお姉さんもすんなり応じてくれて、おまけを付けてくれることもあった。

 結局、学校からの連絡で両親に全部知れた。これは夕貴が望んでいた事だった。今まで、まともに取り合ってくれなかった両親に話をする場がやっと出来たのだった。夕貴は、両親に自分のことを分かってもらいたくて必死に色々な話をした。このことが遊びでもなんでもなく本当の自分なんだと。何度も、何度も。

 それは、本当に女の子になりたかったのになれなかった事を打ち明けてくれた。

 そして、翌日体育祭を迎え無事終了した。

 月日は過ぎ、2年生最後の日になっていた。潤子がカメラを持っていたので記念に写真を撮っていると、玲佳が教室から飛び出し戻ってくると女子の制服一式を夕貴に手渡し、その場で着替えを勧めた。困っている夕貴に潤子が助け舟を出してくれ着替えにいって戻った夕貴に玲佳はスカートめくりをした。怒って出て行こうとする夕貴に玲佳は平謝りだったけど許してくれ、その代わり、明からは大目玉を食らった。そこで写真撮影会が始まった。夕貴の女子制服の似合い方が可愛くてみんなツーショットを撮ったりして最後に4人の集合写真を撮った。そして仕上がった写真を玲佳の家で楽しく見た。4月からは3年生で高校受験もあるけど今年もいっぱい写真を撮ろうねと言ってアルバムを閉じた。