聴き鉄、もしくは失われた音

乗り鉄、撮り鉄などという言葉を最近よく聞くが、写真を撮るだけでなく、音声を録音する「録り鉄」も結構いるらしい。前に「鉄道音楽」ということでその辺の話に触れたかどうか忘れたが、私にもなんとなく気持ちが分かる。とはいえ、モーター音の種類がどうとかいう話には、あまり興味がなくて、やはり鉄道が走るときのあのリズムが好きなのだと思う。
最近は車体が軽くなって素材も変わったため、そのリズムや音もずいぶん軽くなった気がする。重い鉄の車両が大きな鉄橋を渡るときのあのスリリングな感じは、もしかしたらもはや「失われた音」なのかもしれない(SLの音それ自体はむしろそれとして保存されているような気もする)。鉄道にかぎらず、こういう「もはや聞くことのなくなった音」というのは、黒電話の呼び出し音のように誰でも思いつくもの以外にも、結構あるのではないか。
「フィールドレコーディング作家の第一人者」であるというクリス・ワトソンの『El Tren Fantasma (幽霊列車)』は、メキシコの鉄道や駅を音を中心としたコラージュ的作品。ここには、まだ重い車体とあの懐かしい音がある。そして、鉄道の音は音楽と音楽じゃないもののあいだ、ぎりぎりのところを行ったり来たりする。非常に地味ではあるが、以上の話にわりとぴんとくる人々にはお勧めのCDだ。


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