四葉のはなし

「四葉」というかわいい曲を好んで歌っているが、私がはじめて聞いたのは例によってジョアン・ジルベルトの「伝説」というCDである。
どうやら、アメリカの曲らしいと聞いたので、いくつかの英語ヴァージョンを聴いてみた。

これがもっとも有名なヴァージョンらしい(1948年、Art Mooney & His Orchestra)。
ところで、それとは別に最近、ある方に聴かせてもらったのが「ジョアンとは別のポルトガル語版四葉」であった。
やはりYou Tubeにあるというので調べてみると、なんとノエル・ホーザによる替え歌と書いてある。

それなら、もしかして家にもCDあるんじゃないかと思ったら、やっぱりありました(14枚組、まだ全部聞いてなかった……)。
Belo Horizonte 歌っているのはCarlos Didier、1935年だって。
歌詞はなんというか、ジョアンのはちゃんと四葉のクローバーだけど、こちらはちょっとした「戯れ歌」みたいな感じ。でも結構、味がある。

改めてI’m Looking Over a Four Leaf Cloverについてウィキペディアで調べてみると、作曲は1927年だというから、ちょっと驚きだ。1948年に大ヒットする前にノエル・ホーザはもう替え歌作ってたわけだ。
分からないのは、ジョアン・ジルベルトが歌っている歌詞でもっと古い録音はあるのかということ。
あと、戦前のアメリカ録音もぜひ聴いてみたいものである。
というわけで、みなさん四葉について情報提供よろしくお願いいたします!

↓我が家の家宝ノエル・ホーザのボックス・セット。


ボサノヴァの神様

このブログの読者のなかには「ボサノヴァの神様」などと書くとすぐにジョアン・ジルベルトのことを思い浮かべる方も多いかもしれない。でも、これはそういう創世神話のことではなく、どちらかというともっと情けない、ショボいものの話である。
その超自然的な存在が、私のところへ突然やってきたのは数日前のことだった。
薄汚い灰色の服を着ており、一見してありがたい神様というより、貧乏神のよう。
だが、私の右手に触ったかと思うと「そこは逆だね」と小さな声で言い、じっと私の目を見つめたのだ。視線にはちょっとした憐れみというか、どんよりした鬱な気分が漂っていた。
私は、悲しくなってすがるように言う。
「十年もギター弾いてきたんです。もう、どこにも行かないでください!」
すると神様はますます気の毒そうな顔をして、しかし何も言わず、そこにごろんと寝転がった。ぷーんと鼻につくような臭いが漂ってきたが、私はギターを弾き続けた。


サンパウロへのサウダージ

最初に見たブラジルはサンパウロで、私はそこで2週間近くうろうろした。
ご存知の通りコンクリートだらけの巨大都市であり、リオやサルヴァドールに比べれば、色気はない。
でも、長い時間を経て記憶のなかでは、美しいリオやサルヴァドールよりもサンパウロのほうが存在感を放っていたりするから不思議である。
遠い昔にレヴィ・ストロースが撮影したこれらの写真が魅力的なのも、やはり時間の経過があってこそだろうか?
今福龍太さんが撮った写真との「今昔」の対比も面白いし、同氏のちょっと気取った文章も悪くない。
それでも、ちょっとやりすぎの本という感じは否めない。

今福氏とほぼ同じ頃サンパウロへ行った私が探したのはレヴィ・ストロースが見たこの街じゃなくて、若き日のカエターノ・ヴェローゾが見た風景。
「サンパ」という歌のなかにある「サン・ジョアン通りとイピランガ通りの交差点」に立って想像してみたが、正直言ってよく分からなかった。

この名曲をジョアン・ジルベルトが素晴らしいカヴァーにしてしまった。
ジョアンの素晴らしい演奏はたくさんあるが、原曲をうまく料理したカヴァーという意味では、聴くたびに感心して凄いと唸ってしまう。
私は必死に日本語の歌詞をつけてみたが、2つのヴァージョンに挟まれて迷子になってしまったようだ。
レパートリーとしてなんとかもう一度復活させたいのだが、手直しすればするほどヘンテコになってしまう。
これを無理に訳そうとすること自体が「やりすぎ」なのかもしれない。


ジルベルト・ジル(2)

ジルベルト・ジルの真似はできないと前に書いたが、悔しいので一応やってみた。

Aquele Abraco 演奏&歌 by OTT

「アケリ・アブラッソ」とは抱擁を意味し、リオ・デ・ジャネイロでは別れの挨拶がわりに使われるらしい。
ジルベルト・ジルが故国を追われ、イギリスへ亡命する前に書いた代表曲で、リオという街への愛情がこめられている。
これだけ聞くと、「まあ、いいんじゃない?」と思われるかもしれないが、
やってるほうは、本当に苦しい。なんというか、音楽が「自分のもの」にならない感じなのだ。

参考のために、ご本尊の演奏も。

ちなみに私の妻はジルベルト・ジルについて、珍しくこのように論評していた。
「音楽が簡単に国境を越えるというのは、たいてい嘘に思える。
だが、ジルは確かに越えている」
どこかの偉い評論家が書いた文句みたいで面白いので、書き記しておこう……。


ボサツノバ・ライブ


前にもこのブログでちょっと触れたアーティスト、ボサツノバ。
こんど「だあしゑんか」でライブをやってもらうことになった(10月26日)。

「ボサノヴァ弾き語りをするお坊さん」で「菩薩ノバ」というと、
なんだかただの冗談にしか思えないかもしれないが、
ぜひ、騙されたと思って一度体験してほしい。

あらゆるジャンルのカヴァーや替え歌、オリジナルが融合し、
驚きや笑いとともに音楽そのものの楽しさが感じられる演奏と歌は、ちょっとした言葉だけじゃ説明しにくい。
私が知る限り、今、東京近辺でもっとも刺激的な弾き語りだ。

菩薩ノバHP