ぴったりの恋、ぴったりこない演奏

普段ボサノヴァばかり聴いているんだろうと思われそうだが、そうでもない。
でも、たまにはCDも買ったりもする。今回は、ホベルト・ギマランエスという人。
大好きな曲のひとつに「Amor Certinho(ぴったりの恋)」というのがあって、名著『ボサノヴァの歴史』にこんなエピソードが載っている。

ロベルトは、彼(ジョアン・ジルベルト)に「ぴったりの恋」を披露し、ジョアンはこの曲に一目ボレしたような気持になった。だが、一聴きボレではない。あの夜彼は、これで完全に覚えたと思えるまで最低五十回はロベルトにその曲を歌わせたからだ。しかし学生ロベルトは、自分の曲がジョアン・ジルベルトの次のLP『愛と微笑みと花』に録音されることになろうとは、夢にも思っていなかった。

この話が好きで忘れられないのは、何度も繰り返して歌わせるのにふさわしい感じの曲調と歌詞だからだ。繰り返しているうちにこんがらがって、つい笑ってしまうような感じ。音楽家の世界では一度聞いて覚えてしまったというようなエピソードがよくあるが、それとは逆なのもいい。
そんなわけで、この尊敬すべき作曲家のCDをさっそく買ってみることにした。他にもいい曲がたくさんある。いいアルバムだと思う。
ただ、演奏や歌については、なんだかあまり耳に入ってこない。どうも最近、この手のサウンドや芸風を冷静に楽しめなくなっているようなところがある(だから、このCDの問題じゃなくて、たぶん私のなかの問題)。
この辺のことは、回を改めてまた書いてみようと思う。


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