眠りは弱虫のためのもの

--『おねしょの書』(パジャマ教の聖典)より

眠りは弱虫のためのもの

悲しいとき、泣きなさい。そして眠りなさい。
苦しいとき、泣きなさい。そして眠りなさい。
辛いとき、泣きなさい。そして眠りなさい。
怖いとき、泣きなさい。そして眠りなさい。
眠りは弱虫のためのもの。

*パジャマ教はどちらかというと現世利益を追求する側面が強いものの、その発想はひたすらにへたれである。


またしても神さまの眠りは妨げられ

--『おねしょの書』(パジャマ教の聖典)より

またしても神さまの眠りは妨げられ

昔のはじまり、はじまりの最初。
神さまは愛情をこめて人間をつくったという。

ところが、眠っているあいだに、人間たちはどんどん殖える。
この世に生を受けた喜びを発散させる彼らは、
敬虔な祈りとともに、さまざまな騒音を天と地に響かせた。
やがて、それは神さまの眠りを妨げるようになる。

辛抱強い神さまも次第にイライラしはじめ、
やがて人間を懲らしめるべく、恐ろしい懲罰を与えた。
大地は水で溢れ、生き残った者は少なかった。
生き残った者らは、命に感謝して祈った。

神さまのご加護のもと、人間はまた殖えていった。
すると、またしても神さまの眠りは妨げられ、
懲罰的な天災や戦争も繰り返された。

しかし神さまもやがて騒音のなかで眠るコツをおぼえ、
人間の祈りもめったに届くことはなくなった。
だから神学者たちは、最近の天災や戦争が、
神さまの不眠とは、何ら関係のないものと解釈している。

*不眠に悩まされる神というモチーフは古代オリエントを中心に見られる。


聴き鉄、もしくは失われた音

乗り鉄、撮り鉄などという言葉を最近よく聞くが、写真を撮るだけでなく、音声を録音する「録り鉄」も結構いるらしい。前に「鉄道音楽」ということでその辺の話に触れたかどうか忘れたが、私にもなんとなく気持ちが分かる。とはいえ、モーター音の種類がどうとかいう話には、あまり興味がなくて、やはり鉄道が走るときのあのリズムが好きなのだと思う。
最近は車体が軽くなって素材も変わったため、そのリズムや音もずいぶん軽くなった気がする。重い鉄の車両が大きな鉄橋を渡るときのあのスリリングな感じは、もしかしたらもはや「失われた音」なのかもしれない(SLの音それ自体はむしろそれとして保存されているような気もする)。鉄道にかぎらず、こういう「もはや聞くことのなくなった音」というのは、黒電話の呼び出し音のように誰でも思いつくもの以外にも、結構あるのではないか。
「フィールドレコーディング作家の第一人者」であるというクリス・ワトソンの『El Tren Fantasma (幽霊列車)』は、メキシコの鉄道や駅を音を中心としたコラージュ的作品。ここには、まだ重い車体とあの懐かしい音がある。そして、鉄道の音は音楽と音楽じゃないもののあいだ、ぎりぎりのところを行ったり来たりする。非常に地味ではあるが、以上の話にわりとぴんとくる人々にはお勧めのCDだ。


周囲は変わってしまったが

--『おねしょの書』(パジャマ教の聖典)より

周囲は変わってしまったが

あまりに長い夢を見ていたため、荘子は目を覚ましたとき、
自分がすっかり何者であるか忘れてしまった。
周囲は変わってしまったようだが、
以前とさして違わないようにも見えた。
誰も顔見知りがいなかったので、電車に乗り都会へ出た。
ミュージシャンとなってバンドを結成した。
そして「胡蝶」という美しい曲でデビューした。

*『おねしょの書』にはここで登場した荘子をはじめ、古今東西の著名人が多く登場するが、史実や文献をないがしろにしたものも多い。