敗北主義

なんとか主義というのはたいてい冗談でしか使わないが、「敗北主義」という言葉はわりと本気で気に入っている。

ちょっと前に「無人島の領有権に興味はない」などと書いたが、さすがにだんだん話がエスカレートしてくると、そうも言ってられなくなってきた。中国本土には友人もいるし、何らかの危険に直面していると思うと、心が痛む。
もっとも、私のような「敗北主義者」が、いくら「あんな島など、思い切って明け渡してしまえ」とか言っても仕方ないので、ここではもう少しちがうことをメモしておきたい。

私のような少数派をのぞき、世論というものは大抵「強硬姿勢」を喜ぶものである。したがって外交には、お互い現状を維持しながら、相手を殴っているフリみたいなものが求められる。結構、危険な技と言わざるをえないが、しばらく日中も日韓もそうしてきた。強硬姿勢のフリをやめて、本気で現状を打開しようとするのは、いわばルール違反ということだ。

それはともかく、孫崎享『戦後史の正体』(創元社)という本によれば、北方領土もふくめ、日本が抱える3つの厄介な領土問題はすべてアメリカ合衆国が戦後の外交政策として意図的に埋め込んだ仕掛けのようなものだということらしい。それはそれで、なるほどと思える見方である。もちろん、孫崎氏は敗北主義などでなく、これはひじょうに立派な本である。話題の書らしい。ミュージシャン関係の知り合いでも複数の人が同時多発的に読んでいると言っていた。けっこう珍しい現象だ。


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