アラブ・エクスプレス

無人島の領有権についてはあまり関心がないが、連日伝えられるシリアの惨状には心を痛めずにはいられない。
そんななか、私は六本木で「アラブ・エクスプレス展」を見に行き、その後は付近でクスクスを食べられるところを、などと考えていた。我ながら能天気なものだ。そして、美術館は六本木の夜景をバックにした完全な観光スポット。きらびやかなライトのなか、何か不吉な威圧感めいたものを感じる場所だ。
アートも「ところかわれば」だな、と思う。たとえば、シリアの「処刑場広場」を映した写真がある。解説を読まなければ単なる風景写真にも見えるし、恐らく今となってはそれ以上に悲惨な場所となっているかもしれない。このようにかぎりなく報道写真に近い作品もあれば、抗議運動に近い作品もあり、また政治や戦争と離れた芸術が成り立たないことを嘆く作品もある。私たちのいる場所では、アートはむしろ娯楽や消費、虚栄などに近いだろう。それに慣れきっているので、いちいち解説を読まなくてはならないことが面倒だと思ったりもしてしまうが、これは単に文脈を共有していない異文化というだけのことかもしれない。
もちろん、解説なしにぐっとくる作品、笑える作品もいくつかはある。でも、それを素直に喜べないような六本木の夜であった。

シリアの人々のために祈ります。

ベイルート


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