500年の歴史にボサノヴァなし--「火の記憶」完結

神話時代のはるかなる時間とコロンブスの「発見」から1984年までの約500年。
約500ページ×全3冊。最初の1冊が出たのは2000年末だから、翻訳刊行だけでも軽く10年以上かかっているわけだ(原著は1982~)。
まずは、完結を言祝ぎたい。素晴らしい仕事です。

すこし詩的な言葉で書かれた歴史の断片集という感じだろうか。
それぞれの断片は出典というか参考書籍が挙げられており、その書名を眺めるのも楽しい。
ついでに、この10年間で読書をしながらインターネットで調べるという悪癖が可能になってしまったので、分からないところをあれこれググってみたり。

とはいえラテンアメリカの通史として勉強になるかといえば怪しい。
20世紀の巻は、音楽家だけでもヴィラ・ロボスやアタウアルパ・ユパンキ、アグスティン・ララ、ボラ・デ・ニエベ、カルロス・ガルデル、カルトーラ、アリ・バホーゾ、カルメン・ミランダ、シコ・ブアルキなんかが華々しく登場するが、ボサノヴァの誕生は触れられていない。
文学にしても、ガルシア=マルケスやフアン・ルルフォ、パブロ・ネルーダ、ジョルジ・アマード、ギマランイス・ローザなどなど、これも挙げだしていったらキリがないもの、バルガス・リョサやオクタビオ・パスには触れられない。まあ、なんとなく著者の好みも基準も分かるような気もするし、特に異論があるというわけでもない。
ただ、どちらかというと、こんな風に「誰をどう書いているか」が気になる20世紀よりも、知らないことだらけだった最初の2巻のほうが面白かった気もする。

日本の歴史をこんな風に書くことができるかどうか、考えたりもしてみる。もちろん難しいけれど、無理だとは思いたくない。そんな風に感じさせてくれる書物でもある。
そして、かの土地にまた行ってみたいとも。メキシコ、ブラジル。まだ行ったことのないあれこれの国々にも。


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