広場と庭

アントネッラ・アンニョリ『知の広場』(みすず書房)
最近、図書館にすごく世話になっている。昔からよく使っていたが、インターネットで使い勝手がよくなっというのが大きい。
そういう時代、確かに図書館の存在価値って何だろうとは思う。
好きな場所のひとつだし、なくなってほしくない。
広場のような場所であるべきという理想はよく分かる。メキシコシティの広場はでかすぎ、オアハカの広場は素晴らしいというのもわかる。
本自体はやや図書館関係者向けという感じで、それほど面白い読書ではなかったけど、関連業界(?)の方にはぜひ読んでいただきたい。

ヨーロッパ文化の広場に対応するものが日本にないとか、いやそれは銭湯だろうとかいう議論はともかく、近くに少し広場っぽいところがあって、近所の暇をもてあましつつお金のなさそうな老人たちが集まっている。
行政はというと、明らかにそれを迷惑がっているようである。
図書館を広場に、よりもまず「居心地のよい広場を」のほうが先なのかもしれない。
以下引用。

……ベッペ・セバステは書き、読者にこう呼びかける。「もしベンチが消滅の危機にあるとするなら、それはベンチが危険だと考えられているからだ。ベンチが危険なのは、町中に偶然に、しかも無料で置かれているからである。……」。もし広場からベンチが消えてしまうなら、私たちの図書館が屋根のある広場になればいい。……消費の神さまに敬意を示す必要のない無料の場所に数時間座って過ごせるなら、それだけでいいのである。

レヴィ・ストロース『ブラジルへの郷愁』(中央公論新社)
コンパクト版が出たのを知らず、半年ほど過ごしていた。
1930年代のブラジルを撮った写真。サンパウロは劇的に変わり、バイーアはほとんど同じ。
そういう本ではないのだが。
(タイトルの元になったダリウス・ミヨーの「Saudades do Brasil」コルコヴァードという曲がyou tubeにあったのでメモ)


湊千尋『レヴィ=ストロースの庭』
(NTT出版)
確かに、レヴィ・ストロースが撮った写真の大半を占める先住民がくつろいでいるようなだらだらしているような情景は、「庭で過ごす人々」という感じもする。ちょっと悲しい感じのする庭。
広場ではもちろんない。


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