ひさびさに本を読みながら涙がでてきた。理由はよくわからないが、よい小説だと思う。もしかしたらそのときお酒を飲んでたとか、ベタベタのメキシカン・ボレロを聴いてたとか、そういう理由も少しはあるかもしれない。
本を読み始めてしばらくは、実は誤訳のほうが気になって、「こりゃ、せっかくの本も翻訳がなあ」なんて意地悪なことを考えていた。
ウクライナの話なのに、ウクライナ国旗が空の青とトウモロコシの黄色なんて書いてある。コーンというのは穀物全般だから、この場合はどう考えても麦だろう。(*2012年追加:本当に麦なのか自信がなくなってきた。国旗はともかく、ウクライナって結構トウモロコシ食べているんでしょうか? もし詳しい方がいたら教えてください)あまりに初歩的かつ目立つ誤訳なので、きっと訳者もあちゃーと苦笑しているに違いない。
でも、読み進めていくうちに、そんなことはどうでもよくなってきた。小説だけでなく、その翻訳も勢いがあってすごくいいのだ。
誰にも避けることのできない間違いいうものと付き合うには、2つの方法ある。
ひとつはもちろん、なるべく気をつけて慎重になること。もうひとつは、間違いを積極的に味方につけてしまうというもの。前者の欠点は、細かい点を考慮すればするほど、間違えたり、間違えに気づいたりする可能性はさらに高まるということ。そして、間違えの少ないものというのは、なんでも結構つまらないものだ。
冗談ではなくて、トウモロコシの黄色には詩的な真実があるかもしれない。そういうことは、人生のなかですごく多い気がする。
なんか自己弁護っぽくなってきたのでこの辺でやめておこう。