追悼文


 ある高校時代の友人は、会うたびに、自分はあの頃とちっとも変わっていない、成長していないと言った。実際の彼女はいろんな意味でひどく立派になったように見えたのだけど。
たとえば、久しぶりに会った者同士が「変わってない」と言い合うのは、一種の社交辞令なのだろう。アメリカでは、別れるときに、「変わらないでね」と言 われた記憶がある。それも、今のあなたが好きだから、という意味の愛情表現だろう。「変わった」という言葉は多くの場合、ネガティブに捉えられる。
もちろん、人間はどうしようもなく日々変わっていくものだ。「変わらなくちゃ」なんてイチローに言われるまでもなく。
でも自分が「変わってない」と言い張ったこの友人のことを思い出すと、ふと上のようなことを書いていい加減に生きている自分が恥ずかしく思えてくること がある。本当は、変化の許容よりも、変化への抵抗から、より大切なものが生まれるのかもしれない、と思わないでもないからだ。(2003.9.1)

追記:写真は私の作った泥だんご。


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